【127】 いつまで続く、高野連の時代遅れ 2       2007.05.04

    − 高野連の責任、 彼らに教育を語る資格があるのか −



 3日、日本高校野球連盟(脇村春夫会長)は、野球部員の特待生制度を設けていた学校は高知県を除く46都道府県の376校(軟式、硬式両方は8校)で、部員数は計7971人(判明分)であると発表した。
 違反校の部長は引責辞任、該当部員は5月3日から同月末まで対外試合出場を差し止められるなど、厳しい処分が下される。


 この高野連の措置が、いかに的外れで、理不尽なものかということは、先のこの項に記したが、日本学生野球憲章を楯にして、学校と生徒の責任を問い、自らを省みようとしない高野連の態度は、教育を口にする資格はないといわねばならない。
 まず、「学校が特待制度を設けていることは知らなかった」という高野連の弁明は、関係者ならずとも信じるものはいないであろう。
 中学校やリトルリーグの秀でた選手に高校の野球部の部長・監督やOBなどが入部の働きかけをしていることや、勧誘・説得するにあたっては学力試験の底上げのほか授業料・寮費などの減免を提示していることは、関係者ならずとも常識で、例えばスポーツ記者の誰に聞いても知っていたと答えるだろう。それを高野連の誰一人も知らなかったというのだから、教育者とは嘘をついてはいけないことも知らないのだろうか。
 実例として名前を挙げて恐縮だが、仙台育英学園は30年くらい前は大荒れしていて、いわゆる問題を起こす生徒たちが集まる学校であった。それがスポーツで優秀な生徒を全国から集める努力をして、野球、駅伝、バレーボールなどで全国に名を知られる伝統校となり、全校生徒にも気概が見られるようになったという。同時に、東北高校も負けじと優秀な生徒を集める努力を始め、ゴルフの宮里藍、野球のダルビッシュ有などを招請し、結果として高校野球では準優勝するまでなって、生徒たちは東北高校の生徒であることを誇りとするようになったのである。
 このように、特待生制度の活用が、生徒のためにも、学校のためにもなることは事実であり、高野連が言うような非難の的になるようなことではない。子供たちを集めたり、その将来に対して金銭が動いたりするのは、それを処罰することが必要なのであって、特待制度が適用されていたかどうかとは、全く関係のない事柄である。


 脇村高野連会長は、「禁止されているとは知らずに制度の恩恵を受けていた生徒に罪はないのでは…」という質問に、「知らなかったということが罪だ。生徒は実際に金銭的恩恵を受けていて、これがアマチュア憲章違反」と答えている。
 生徒には「知らなかったことが罪。知らなかったでは済まされない」と言いながら、自らは知らなかったで済まそうというのは、これまた教育者の態度としては恥ずべきことであろう。


 さらに、対象生徒の特待を剥奪せよとする処置は、生徒の在学そのものを危うくする。中には、授業料と寮費の減免を受けられずに、経済的な理由で退学せざるを得ない生徒も出るだろう。卒業後に返還をさせるといった条件をつけるなどして、学資を貸与するぐらいの教育的配慮をしてから、処分を考えるべきであろう。


 前項にも書いたが、「部員がケンカをした、万引きをした、無免許運転をした…」とか、「規律を守れない生徒に体罰を与えた」となどいって野球部の活動を全面的に禁止したりするような高野連は、視野狭窄の時代遅れである。学生野球憲章の見直しと適用基準の確立を、外部の意見も入れて急ぐことだろう。
 そもそも日本高校野球連盟(高野連)なる組織は、朝日新聞が後押しして結成した社団法人である。高野連の役員や朝日新聞社は、野球大会を興行してその入場料収入やテレビの放映権料(夏の甲子園大会で5億円とか)など莫大な収益を挙げ、報酬を得ているのに、生徒や学校などの現場だけに責任を負わせて、問題を片付けようとしている態度は、自らの責任を自覚していないし、ことの本質を解決するこという…当事者能力を有しているとは言い難い。
 高野連が反省しないのならば、ほとんどの野球名門校は違反処分対象なのだから、「新日本高校野球連盟」を結成すればよいのではないか。スポーツ界の現状を正しく見据えて、その発展と教育的見地を融合させ、子供たちの才能を伸ばし将来を築いていくことが出来る高校野球を実現したいものである。


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